アバのちQueen | レコードプレーヤーで聴く音楽

アバのちQueen

兄でもいればもっと早く音楽というものに目覚めていたのかもしれないが、生憎俺は長男だった。音楽の趣味や傾向は自分で模索するしかなかった。
そんな中2の頃だったと思う。クラスメイトからQueenの存在を教えられた。それまではラジオで歌謡曲を聞く程度だった俺にとって、We Will Rock You は衝撃的だった。借りたレコードに傷をつけないよう丁寧に扱う。カセットテープをデッキに入れ録音レベルを最小まで落としてRec開始。10秒ほど無音状態を作ってポーズ。針を落とした瞬間の「ボツ」という音が入らないようにする。そのまま暫くは普通にかけておいて録音レベルを調整していく。おおよそのMAXの数値が分かったところで演奏をとめる。同じ様に針を落としてから、今度は限界まで待ってポーズを解除。これでそれなりにノイズの少ない録音が出来る。無論、針が上がる時の音も入れるわけにはいかないので、片面が終わる頃には再びレコード盤とにらめっこだ。こうして、SIDE-Bまでの録音が終わって一安心。レコードをジャケットに戻してテープで聞く。途中で音割れなどに気付くと曲名を覚えておいて、レコードでその曲を確かめる。レコード自体が音割れをしているのかどうかを確認するためだ。ここでもし、録音ミスによるものと判明すれば一からやり直しだ。テープごと新しいのにしたいという欲もあったが、そこは中学生の小遣いでは難しいので断念せざるを得なかった。こうして、あっという間に増えていったテープは、今ではすっかり伸びきってまともに聴けたもんじゃあない。
殆どがCDに代わった今、テープに録音などする必要もないので、針を落とす瞬間の音に気を遣うこともなくなったが、CDをセットした直後に「キュルルル」となるあの音が嫌だ。
むしろ、あの「ボツ」という音の方が心地よいのは何故だろう?まして、それが買ったばかりの新品ならなお更だったと思う。今、家にあるレコードは新品ではないので、あの緊張と興奮は味わえないが、俺としてはやはり「きゅるるる」よりは「ボツ」の方がいい。安心できる音だ。